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クリミナルズ [映画(か)行]

クリミナルズ.jpg
満足度 ★★★★

舞台はカナダのケベック州にあるマグダレン諸島の小さな島。ある夜、市長の娘の惨殺死体が崖下で発見されます。これまで殺人事件など起きたこともない平和な島なので、地元警察はモントリオール本庁に応援を依頼し、捜査官が島に乗り込んできます。

本庁捜査官のプロファイリングにより、性的異常者に的が絞られ、島に住む変態男が逮捕されるのですが、島の警察の巡査部長アンドレは納得できませんでした。彼は独自に聞き込み捜査を続け、真犯人に迫ろうとします。

アンドレのキャラクター設定がいいです。眼鏡をかけ、メタボ体型で、頭髪も薄くなりかけている、典型的な田舎のオジサンです。島での退屈な暮らしに嫌気がさしたのか、あるいはサエない旦那に嫌気がさしたのか、妻は家を出てモントリオールに住んでいます。しかも、過去のトラウマからか、アンドレは水に近づくとパニックを起こすのです。

島に住みながら水が恐いってことは、島を出ることすらできないってことになります。もちろん釣りもできないし、ボートやヨットにも乗れません。そりゃ奥さんに出て行かれても仕方ありませんね。はたしてアンドレは真犯人を特定できるのか、そしていつか水恐怖症を克服できるのか、その2点を軸に物語は進んでゆきます。

ごくごくオーソドックスなミステリーで、ドジでノロマな亀がコツコツ働いて、最後には兎を追い抜く話です。あまり期待しないで観たのに、こういう隠れた名作に当たると嬉しいですね。



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コレクター [映画(か)行]

コレクター3.jpg
満足度 ★★★

ん~、この邦題ね~、女性が拉致監禁される話なので安易に「コレクター」と付けてしまったようですが、その発想の貧困さにはあきれますね~。ちなみに、その情けない配給会社は日活ですけれども。過去の名作に便乗して、あわよくばヒット作の仲間入りをしたいっていう魂胆がミエミエなんですよね~。
コレクター1.jpgコレクター2.jpg
原題は"The Factory"といい、犯人の家の地下でおこなわれていたことがわかった時にはじめて、ああなるほどと思えるような、映画の内容にピッタリのタイトルです。だからなおさら、邦題のチャラさが際立ちます。

3年にわたって娼婦ばかりが失踪する事件を追っている刑事のマイク。ある夜、恋人に遭いに行った娘が行方不明になってしまいます。派手なメイクに下品なファッションの娘だから、娼婦と間違えられて拉致されたに違いない、早く見つけないと殺されてしまう、と彼は考えます。

そこから「96時間」のリーアム・ニーソンのごとく、やや暴走しつつ犯人を追いつめてゆくプロセスは、なかなかよく出来ていて楽しめます。ところが、やっと犯人のアジトを突きとめて、これで事件も解決かと思われた矢先、唐突に事件が起きるんです。

あまりにも唐突なので、「へ?」という感じです。観客の意表をつくことに成功した脚本家のドヤ顔が浮かんできそうで、やがてそれは腹立たしさに変わります。いくらなんでもあり得へ~ん!絶対にあり得へ~ん!と心の中で叫ばずにはいられない展開ですから。

最後に余計な事さえしなければ、そこそこ面白かったんですけどね。あのエンディングでチャラになってしまいました。おそらく続編を作りたかったんでしょうが…… ねえよ!



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キンキー・ブーツ [映画(か)行]

Kinky Boots.jpg
満足度 ★★★★☆

ええ、嫌いじゃないですよ。「硝子の少年」とかね。

それは KinKi Kids や!

ま、冗談はさておき、とっても素晴らしい作品でした。
久しぶりに映画らしい映画を観たような気がします。

2006年の公開当時から、この作品に対する称賛の声はあちらこちらから聞こえてきていたものの、今まで観る機会を失っていました。どうしてもっと早く観なかったのか、今はそれを悔いるばかりです。

イギリスはノーサンプトンにある老舗の靴工場。主人公はそこの4代目なのですが、家業を継ぐ気はさらさらなく、恋人と一緒にロンドンで暮らすことばかり考えていました。そんな矢先、3代目社長のお父さんが急死し、社長の椅子を継がなくてはならなくなります。

作っているのは旧態依然とした紳士靴ばかり。「ウチの靴は一生ものだぜ。」と彼が言うように、質実剛健な自社製品は長持ちすることが災いして販売が伸びず、気軽に履きつぶせる安物の外国製品にシェアを奪われて、経営は火の車でした。

ところがある夜、ロンドンでドラァッグクイーンのローラに出逢ったことがきっかけとなり、彼女(?)たちのためのブーツを作ることでニッチ市場へ参入し、経営の立て直しを図ることになります。

真っ赤なエナメル素材に蛇柄、鋼鉄のピンヒールをあしらった「変態ブーツ」を作ることに、当然のごとく従業員たちは猛反発しますが、そんなブーツでも靴は靴、主人公の熱意は少しずつ従業員の心を動かしてゆきます。その過程が何とも暖かい。

ドラァッグクイーンを演じたキウェテル・イジョフォーの熱演が素晴らしいです。この年のアカデミー主演男優(?)賞を獲れなかったのが不思議なくらい。

つまり、この作品を一言で言うと…

キウェテル が イケてる

…でしょうか。

彼の出演した作品「堕天使のパスポート」と同じくらい大好きな作品になりました。




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黒部の太陽   @シネマクレール [映画(か)行]

黒部の太陽.jpg
満足度 ★★★★★

これを映画館で観られるとは思わなかった。ありがとう、シネマクレール。

石原裕次郎さんが日活から独立して石原プロモーションを立ち上げ、すでに独立していた三船敏郎さんと一緒に制作した作品。

当時は監督も役者も映画会社の専属で、移籍することもレンタルすることもできなかったため、裕次郎さんはキャスティングの段階から大変苦労したらしい。

そこに手を差し伸べたのが、劇団民藝を主宰していた宇野重吉さんだった。だから出演者は劇団民藝に関わる人で固められている。もちろん宇野さんも出演しているのだが、息子の役を実の息子である寺尾 聰さんが演じていたのは知らなかった。

ドラマのメインになるのは、山深い黒部の谷まで資材を運ぶための大町トンネル(現在の関電トンネル)の掘削工事である。途中に破砕帯が走っており、大量の出水に工事は困難を極め、たった80メートルの破砕帯を突破するのに多くの犠牲者を生み、長い年月を要したのだ。

三船さん、石原さんを含め、どの役者さんも迫真の演技、工事を担当した熊谷組の敷地内に実物大のセットを組み、実際に大量の水を流して撮影したというから、リアルさが全然違う。今から45年も前にこのようなスケールの大きい映画が作られていたことに、あらためて驚かされた。

この作品には石原さんの並々ならぬ情熱が注ぎ込まれており、是非とも劇場で観てほしいという意向から、これまでビデオ化もDVD化もされていなかった。かといって、劇場公開されることもまずなく、おそらくもう一生観ることができないだろうなと諦めていた。

ところが今年の春、石原プロモーション設立50周年ということで、Blu-rayおよびDVDが発売されたらしい。う~ん、これまで何十年もおあずけをくらっていたオジサンは嬉しさ半分悔しさ半分だぞ。

とはいえ、やっぱりこれは劇場で観てあげなきゃ石原さんが浮かばれないでしょ。てことで、この時期上映に踏み切ってくれたシネマクレールの心意気にはいくら感謝してもしきれませんね。日本人なら絶対に観ておくべき1本。




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タグ:黒部の太陽
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崖っぷちの男   @TOHOシネマズ岡南 [映画(か)行]

Man On A Ledge.jpg
満足度 ★★★★

これは思いがけない拾いものだった。ずいぶん面白いじゃないか。
しかし、この邦題はないな。昭和の日活映画じゃあるまいし。

実は、少し前に「ザ・レッジ」という、同じようなシチュエーションの作品を観たばかり。安っぽいキャッチコピーとリヴ・タイラーのヌードだけを売り物にしたようなプロモーションに辟易したので、映画館での観賞はスルーして、レンタルDVDで観賞したが、やはり予想通りの駄作だった。
The Ledge.jpg

で、本作は「Man On A Ledge」らしい。やれやれ、よりにもよって同じようなタイトル付けて、また落胆させようってのか? でも、こっちはキャストが渋いぞ。ハズしても腹が立たないように、レイトショーで観てやろうってことで、シネコンなのに観客わずか5人というお寒い状況で観賞。

ちなみに、「Ledge」というのは、壁や窓から突き出た庇の部分のことを指すらしい。飛び降り自殺にゃもってこいの場所ってことですな。

ニューヨークの老舗ホテル、ルーズヴェルト・ホテルの21階のLedgeに、今にも飛び降りそうな男が立っており、街は騒然となる。彼は交渉人としてマーサーという女性を指名してくる。彼女は1ヶ月前、橋から飛び降りようとしていた自殺志願者の説得に失敗したというトラウマを抱えていた。

男は元ニューヨーク市警の警察官で、無実の罪を着せられて服役していたが、服役中に亡くなった父の葬儀に出席した際、ドサクサに紛れて脱走していたのだった。無実を証明したいはずの彼が、どうして自殺しようとしているのか? 予想外の展開にグイグイ引きつけられてゆく。

サスペンスのみならずアクションにもかなり気合が入っていて、「ミッション・インポシブル」とか、「オーシャンズ11」とか、「ブラック・ダイアモンド」を彷彿とさせるテンションで楽める。その結果、先日観た「ザ・レッジ」のショボさが、ますます引き立つことになってしまった。

ストーリーに多少無理があっても、そんなの気にしないでノリと勢いで押し切れば、観ごたえある娯楽作品ができるんだぜぇ、ワイルドだろぉ~? スギちゃんに宣伝を頼めばそう言ってくれそうな佳作だった。

蛇足ながら、すっかり頭髪の薄くなったエド・ハリスが、ヘッドギアをはずしたロボコップに見えて仕方なかったなあ…
Ed Harris.jpgRobocop.jpg

エド・ハリスといえば、忘れられないのが「アポロ13」。武骨で男気にあふれる演技、一挙手一投足がすべて絵になるカッコよさ、シビレます。
Apollo 13.jpg

今回は悪徳実業家という役どころなのでスーツを着ていたが、やはりこの人には制服を着ていてほしいな。


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君を想って海をゆく   @シネマ・クレール [映画(か)行]

君を想って海をゆく.jpg
満足度 ★★★★

原題は「WELCOME」。フランス映画なのに「BIENVENUE」ではなくて、あえて「WELCOME」としたところに強烈な皮肉が込められているのだが、こんなクサい邦題じゃ全く伝わらない。

主人公のビラルは17歳、イラクのクルド人自治区からフランスのカレーまで4000kmを3カ月かけて歩いてきた。カレーからは英仏海峡を渡るフェリーが出ている。トラックの荷台に潜り込んで、こっそりイギリスに渡るつもりだった。

彼がイギリスに行く理由は、ロンドンに家族と移住してしまった恋人ミナに会うため。ミナの父親は、商売で成功している彼女の従兄と結婚させようとしている。うかうかしていると彼女を盗られてしまう。

しかし、ビラルはトラックでの密入国に失敗してしまい、もはや泳いで渡るしかないと考える。そんなこと、オリンピック選手でもできるわけがない。ましてや彼は山岳民族だ、海なんか見たこともなかったはずだろう。

彼は、スイミングスクールの門を叩き、コーチのシモンに個人レッスンを頼むことにする。ビラルの企みに気付いたシモンは、「水温10℃の海を10時間も泳ぎ続けられるわけがない。」と、やめるよう説得するが、ビラルは聞き入れない。

シモンはかつてオリンピックのゴールド・メダルリストだったが、今は市民プールで子供や老人相手に水泳コーチをして細々と暮らしている。別居中の妻は、英語教師をしながらクルド難民たちに食事を支給するボランティアもしている、とても志の高い女性だ。

ここで、クルド人がどうして難民化しているのかを勉強しておかなくては、この作品の背景が理解できないだろう。

クルド人の総人口は約3000万人。トルコ、イラン、イラク、シリアなどの山岳地帯に広く居住し、それぞれの国で少数民族として肩身の狭い思いをしている。
クルディスタン.jpg
彼らの住む地域はクルディスタンと呼ばれているが、これはあくまでも居住地という意味であり国家ではない。つまり、彼らは独自の国家を持たない(持ちたいのに持てない)世界最大の民族集団なのだ。

どうしてそんなことになったのかというと、かつてクルディスタンは広大なオスマン帝国の一部だったが、オスマン帝国が第一次世界大戦で敗れたために、フランスとイギリスの都合で国境線が引かれてしまい、土地を分断されたからだ。

もともと言語も文化も異なる彼らが、欧米列強の都合で、あっちこっちに併合されてしまったのだから、問題が起きるのは当然だ。彼らは、それぞれの国で分離独立を求める運動を起こすが、そのたびに村を焼かれ、拷問や虐殺を受けている。

イラクでは、湾岸戦争の時にクルド人が独立しようとして蜂起したが、イラク軍に攻撃され、200万人にも及ぶ難民を作り出してしまった。その後国連が介入してクルド人自治区がつくられ、フセイン政権崩壊後は国家としての体制を整えつつあるが、石油の出る地域だけに、イラク政府は自治権の締め付けを強化していて、紛争の火種はまだくすぶっている。

ビラルの出てきたクルド自治区には、そういった背景があるのだ。政情不安で家を失い、独立もできないなら、ヨーロッパへ移住してしまうしかなく、貧しい人々は密入国という手段に頼るしかない。

かつては移民に寛容だったフランスも、いろんな問題が出てくるにつけ、厳しい態度で臨むようになった。特にサルコジは冷徹な政策をとっており、フランス人が難民に食事や住居を提供するだけで犯罪になってしまうようになった。

ビラルに会うまではクルド人問題に無関心だったシモンだが、彼のミナに対するひたむきな気持ちを知って、少しずつ変わってゆく。もちろん、難民を助けることで妻をまた振り向かせることができるかもしれないという潜在意識もはたらいていただろうが。

「君は愛する女性に逢うために4000kmも歩いてきて、これからさらに冷たい海を泳ごうとしている。それなのに私は、愛する人が目の前に居ながら、手放そうとしているんだ。」というシモンの言葉が印象的だ。

若さと運動神経の良さとでメキメキと水泳の腕を上げたビラルは、シモンに黙って出発してしまう。二人の間には父子のような感情が芽生えており、心配して捜索願を出したシモンが、ビラルとの関係を訊かれて、「私の息子です。」と答えるシーンに胸が熱くなる。

普遍的な愛を軸に、現代フランスの抱える移民問題に取り組んだ秀作。

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キラー・インサイド・ミー   @シネマ・クレール [映画(か)行]

キラー・インサイド・ミー.jpg
満足度 ★★★★

これはゾッとするほど怖い。後味の悪さもハンパではない。
「隣の家の少女」や「ファニーゲーム」を観た後の、めまいを覚えるほどの気分の悪さを久しぶりに感じた。

隣の家の少女.jpgファニーゲーム.jpg

「ファニーゲーム」のコピーであった『人間が一番怖い』、それがピッタリ当てはまる作品だった。

舞台となるのは、1940年代と思われる西テキサスの田舎町(エンドクレジットを見ると、何故かロケはオクラホマとニューメキシコでおこなわれている)。住民同士が皆知りあいのような、そんな町で保安官助手をしているルー・フォードは、どこにでも居そうな平凡な男。そんな彼が、町はずれの一軒家で売春をしている娼婦のジョイスに警告しに行くところから物語は始まる。

保安官からの命令として事務的に事を運ぶルーに対して、なぜか逆上して殴りかかるジョイス。殴られたことにより、封印されていた彼の中の悪魔が目を覚ます。平凡そうに見える彼にはダークサイドがあり、子供の頃は殺人事件にも関わっていた。

彼の中の悪魔は、愛する者を殺してしまわなくては気が済まない。それまでどんなに愛していようが、実に平然と鼻歌を唄いながら事をやってのけるのだ。「アメリカン・サイコ」におけるパトリック・ベイトマンのごとく。

普段はサエない男が突如悪魔に変身してしまう恐ろしさ、演じるケイシー・アフレックの抑揚の無い喋り方が、さらにそれを増幅させる。

劇中でルーが鼻歌として唄っていて、エンディング・テーマにもなっている "Shame On You" という曲のことが気になったので、調べてみた。



"Shame On You!" とは、「恥を知れ!」という意味。バラク・オバマがまだ大統領予備選を戦っていた時、戦況不利となったヒラリー・クリントンから "Shame On You, Barack Obama!" と罵られていたのを憶えているが、そういう時に使う言葉だ。

この唄を唄っているスペード・クーリーという人は、1940年代に活躍したウェスタン・スウィングのキングと呼ばれた人らしい。50年代に入ってプレスリーが登場したことにより、ミュージックシーンは一気にロカビリーに傾き、彼の音楽はまったく売れなくなった。

落ち目になったミュージシャンほど惨めなものはない。当然のごとく彼は酒に溺れるようになり、奥さんは家を出てゆく。そして1963年、和解を求めて会いに来た奥さんに殴る蹴るの暴行を加え、殺してしまったのだ。
ひえ~ おっそろし~!

第一級殺人罪で服役した彼は、模範囚であったために8年で出所し、再びステージに立った。かつてのファンからスタンディングオベーションで迎えられ、人生の再出発をする決意を固めた彼だったが、そのステージを降りた途端心臓発作に襲われ、この世を去ってしまった。

いや~、まさに波乱万丈の人生。フツーのオジサンだって、状況次第で悪魔になれることを証明してくれたわけですね。デイヴィッド・フィンチャーあたりが映画化しないかな?

" Shame On You " という歌の意味、それを唄っていた歌手の人生を知って、この唄がこの作品でどれほど大きな意味を持つのかがわかったし、これを選んだ人のセンスの良さにも驚嘆した。と同時に、見終わった時以上に背筋のゾクゾクする感じを味わった。

非常に丁寧に作り込まれた質の良いスリラーの名作だと思う。

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キッズ・オールライト   @シネマ・クレール [映画(か)行]

キッズ・オールライト.jpg
満足度 ★★★★

私はジョニ、18歳。3歳下の弟レイザーと仲良く暮らしてる。家族みんなでナショナル・ジオグラフィック・チャンネルを観たりしてね。ウチにはパパが居ないの。そのかわりと言っちゃあなんだけど、ママが二人居るの。

どういうことか説明しなきゃわからないわね。ママ達はゲイ、つまりレズビアン・カップルなの。じゃあ、どうして子供が居るんだって? ママ達は精子バンクから精子をゲットしてきて、それぞれが同じ精子で人工授精して私たちを産んだの。つまり、私と弟は異母兄弟ってわけ。

18歳になると精子提供者のことを知る権利が得られるの。弟は精子提供者がどんなヒトか知りたがって、私をつかって聞き出し、逢ってみようって言うの。最初は気がすすまなかったけど、私も実は気になってたから、結局二人で逢いに行っちゃった。

彼、ポールっていうんだけど、そんなに変なヒトじゃなかったので安心したわ。でも、私たちが遺伝学上の父親と逢ったことがママたちに知れて、一度みんなで話し合わなきゃってことになったの。

話のはずみで、ママのうちの一人がポールの家の庭造りを手掛けることになって、二人が急接近しはじめてから、家族の関係がギクシャクしだしたの。もうすぐ遠くの大学に行かなきゃならないのに、とても心配だわ。

ちょっと変わった家族形態、親がゲイであることを真っすぐに受け止め、明るく生きている子供たち。そんなしっかりした子供たちに比べ、大人たちは皆ふらふらして頼りない。" The Kids Are All Right "、まさにその通りだ。

各所に散りばめられた笑いとシャレた会話、楽しい作品だった。

レイザーがポールに質問するシーンなんか、かなり可笑しい。
「どうして精子を提供しようと思ったの?」
「献血より面白いかなって思ってね。」
「 …… 」
「冗談だよ。人の役に立ちたかったのさ。」

ただ、この邦題はいただけません。こんな片言みたいな邦題をつけた配給会社の阿呆の顔が見てみたい。

ジョニという娘の名前は、ジョニ・ミッチェルからいただいたらしく、彼女の名盤「BLUE」がストーリーのポイントになっている。


それにしても、アネット・ベニングの劣化が著しい。(こっちも同じだけ歳とってるわけですけどね)彼女の場合、タバコが過ぎるんだと思う。
「心の旅(原題:Regarding Henry)」のアネットは最高だったけどな。

心の旅.jpg


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クロエ   @梅田ガーデンシネマ [映画(か)行]

CHLOE.jpg
満足度 ★★★★

ハアーイ! あたしの名前は黒江。トロントで高級娼婦をやってるの。並みの男じゃ私を抱けないわよ。毎日相手しているのは、お金持ちの男ばかりなんだから。

今日はいつもと違う客がやって来たの。開業医をしている裕福そうな中年の女よ。キャサリンって言ってたわ。大学教授の夫が教え子と浮気してるんじゃないかって勘ぐっていて、あたしに夫を誘惑してくれないかって言うの。若い娘に誘惑された時、彼がどういう反応を見せるか知りたいんだって。

言われた通り彼に会ったわ。とても素敵なオジサマだった。キャサリンから謝礼を受け取る時、彼女は夫がどういう行動をとったか、とても細かく聞いてくるの。あたしの言葉に敏感に反応する彼女を見て、ちょっとサディスティックな気持になって、してないことまで作り話して言っちゃった。あたしって悪い子ね。

その思いっきり悪い子、黒江に翻弄されながらも、異常な愛に目覚めてゆくキャサリン。そして、途中から思いがけない展開となり、エンディングでもゾッとさせられる。あまり期待していなかったが、なかなか上質な大人のサスペンスだった。

個人的には、キャサリンの自宅のリビングに置いてあった家具がツボだったかな。ル・コルビュジェのシェーズロング、いつかは手に入れたいと思っている逸品。
LC.jpg
ところで、黒江役のアマンダ・セイフライド、このところ出演作が目白押しなのは、何故なんだろう?

セイフライドって名前を聞いて、交通安全週間の一日署長にピッタリだと思っていたが、" Saferide " じゃなくて " Sayfried " のようで、正しくは " サイフリッド " と発音するらしい。ちょっとイメージが狂ってしまったが、もしも彼女に一日署長を頼んだら、こんな感じかなと思って、コラッてみました。

アマンダの一日署長.jpg

ちょっとキモいか? アマンダのファンの方ごめんなさい。


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隠された日記   @シネマ・クレール [映画(か)行]

隠された日記.jpg
満足度 ★★★

昨年末の「クリスマス・ストーリー」に引き続き、カトリーヌ・ドヌーヴが、再び我が子と上手く付き合えない母親を演ずる。

フランスの海辺にある田舎町で生まれたマルティーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、幼い頃に母親のルイーズ(マリ=ジョゼ・クローズ)に捨てられたというトラウマを抱えている。

ルイーズは、家事に追われて家の中に閉じこもっているより、外へ出て仕事をしたがっていた。時代は1950年代、しかも田舎では女性の自立などあり得ないこと。家庭に縛り付けておこうとする夫と対立し、家を出てゆく決心をする。

荷物も持たず突然家を出て行ったルイーズが、いつも娘に言い聞かせていた「手に職を持って自立しなさい。」という言葉を守って、マルティーヌは医者になり実家の近くで開業している。

一方、マルティーヌにもオドレイ(マリナ・ハンズ)という娘がいて、祖母の言葉通り自立しているが、母とは上手くゆかないようで、今はカナダに住んでいる。そのオドレイが久し振りに帰ってくるところから映画は始まる。

オドレイは妊娠していた。相手と結婚する気はない。医者である母親に相談しようと思って帰ってきたようだが、素直に打ち明けることができない。母親の方も、すぐに気付いたのに訊こうともしない。

久し振りに会ったのに、やっぱりギクシャクしてしまう母娘。オドレイは祖母が出て行った母の実家に移り、そこで仕事をしながら過ごすことにするのだが、キッチンを掃除していた時、偶然祖母のつけていた日記を見つけ、そこから話は思わぬ方向に展開する。

いやほんと、そんな、まさかね、の展開に少し唖然とさせられるが、ひとまずは一件落着、母と娘の関係も少し修復されたし、良かったのか悪かったのか、なんか複雑な気持ちで劇場を後にした。

最も印象的だったのは、ルイーズが英語を習いはじめた時、「そんなことをしたら客が減ってしまう。」と、商売をしている夫に言われるシーン。フランス人が英語を喋るなんて、もってのほかだったんでしょうねえ。

それで思い出したのが、シャルル・アズナヴールの「She」という曲。この曲は映画「ノッティングヒルの恋人」の中でエルヴィス・コステロが唄い、リバイバル・ヒットさせたが、フランスではまったくヒットしなかったという。

それは、毎週木曜日にBS-TBSで放映されている「SONG TO SOUL~永遠の一曲」の中でアズナヴール自身が語っていた。「ヒットしなかったのはフランスだけだ。なぜだかわからない。」と。いやいや、わかってるでしょ、歌詞が英語だからに決まってるじゃありませんか。

番組の中では、この曲の誕生に関する秘話が次々と明かされる。

「She」は、イギリスのテレビ番組の主題歌として、英語詞がまず作られ、それにアズナヴールが曲を付けた。「ノッティングヒルの恋人」でもアズナヴールが唄うはずだったが、スケジュールが会わず、音楽監督のトレヴァー・ジョーンズの意見でエルヴィス・コステロが選ばれた。録音はあのアビィロード・スタジオでおこなわれた。エルヴィスはワールドツアーの真っ最中だったが、飛行場へ向かう途中で唄入れをし、その1時間後にはアメリカに飛んだ。唄入れの前に彼は歌手である父にスタジオから電話をし、アドバイスを受けていた。  …などなど、秘話のてんこ盛り。

オリジナルの「She」英語版。

後からフランス語版も出したが、やはり本国ではヒットしなかったらしい。
こっちの方がしっくりくるけどなあ…



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