灼熱の魂 @シネマ・クレール [映画(さ)行]
満足度 ★★★★★
これは、すさまじい話だ。古代ギリシャの悲劇を彷彿とさせる。
序盤に張られた伏線が、中盤から少しずつほぐれ始め、終盤で一気に昇華する。そして最後に突きつけられる残酷な現実。観終わった後も、しばらく頭の中をいろんな思いがグルグル駆け巡り、打ちのめされたように動けなかった。
直後に感想を訊かれたら、こう言うしかなかっただろう。
「なんも言えねえ!」
しかし、決して「チョー気持ちいい」わけではなくて、むしろ数日はトラウマが残りそうなズッシリ系の作品。自分はこういうの大好物だけど、苦手な人には決しておすすめできない。
物語は、中東の出身らしい母親が亡くなり、双子の姉弟に母からの遺言状が渡されるところから始まる。公証人との会話がフランス語なので、フランスが舞台なのかと思ってしまうが、カナダのケベックだということが、ずいぶん後からわかる。不親切なんだよなあ、このあたりが。
母親は、異教徒との間に子を宿したため、一族の恥として相手の男は家族の手により射殺、彼女も出産した子を里子に出されたあげく、村を追い出されてしまう。
いやはやイスラムの社会はすげ~な、と思って観ていたら、彼女の首には十字架が。へ?キリスト教徒やったん?なら、殺された男の方がイスラム?とここで、頭の中がパニックに陥る。
どうやら、母の生まれたのはレバノンで、レバノンは中東では数少ないキリスト教徒が中心の国らしい。そんなこと、中東マニアでもない限り知ってるわけないし、もう少し説明してくれても良かろうもん(博多っ子かい)。
ほんなこつ不親切っちゃねー、この監督は。
母は遺言で、子供たちにとんでもない使命を課していた。つまり、内戦で亡くなったはずの父が実はまだ生きていて、さらに彼らには先に生まれた兄もいて、二人を捜し出して遺言状を渡せと。それまで自分の墓に墓碑銘を入れるなと。
そんなん無理に決まっとう(神戸っ子かい)という弟を尻目に、姉は母の故郷へと旅立つ。彼女の生きたあかしを求めて。そこで知りえた母の人生は、想像を絶するものだった。
本作は、姉弟の生きる現在と母の生きた過去とを交互に上手く描きながら、極上のミステリーに仕上がっている。謎解きで少しずつ明らかになる壮大な人間ドラマ、ズッシリと重たいエンディングは、生涯忘れることができないだろう。
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タグ:映画 灼熱の魂
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