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ブラック・ブレッド   @シネマ・クレール [映画(は)行]

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満足度 ★★

スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞を9部門で受賞し、アカデミー賞のスペイン代表作品になったというから、そりゃもう期待せずにはいられなかった。

しかしね、駄作ではないんだけど、そんなに良いとも思えなかったなあ。むしろ、映画の常識からみて「これ、大丈夫なのか?」と思わせるようなシーンが2ヶ所ほどあって、そちらの方が印象に残った。

舞台は内戦が終息して間もないスペインのカタルーニャ地方の寒村。右派が勝利をおさめ、左派の残党狩りが公然とおこなわれている。村人たちも勝ち組と負け組とにはっきりと分かれ、村の根底には不穏な空気が流れている。

そんな時、村人の一人であるディオニスの乗った馬車が崖から転落し、息子ともども命を落としてしまう。

まず、このシーンが問題。ハリウッドだと、「私たちはどんな動物も傷つけてませんよ。」という文言を、必ずエンドロールに記述するのが習わしになっている。動物愛護団体の顔色をうかがってに敬意を表して、動物が死ぬシーンでも本当に殺したりしないのが今は常識なのだ。

ところが、この作品では馬を実際に崖から突き落とし、おまけにその様をスローモーションで撮影するという、ハリウッドの常識を真っ向から否定するような手法をとっている。単に無知なのか、それとも知ってて敢えてやったのかはわからないが、どのみちこの時点でアカデミー受賞はなくなったと見るべきだろう。

物語は村に住む無垢な少年アンドレウの眼を通して語られる。彼の父親は左派に属しており、事故を装ってディオニスの馬車を転落させたのではないかという嫌疑をかけられたため、家族を置いて国外に逃亡しなくてはならなくなる。仕方なく預けられた祖母の家で暮らすうち、彼は大人社会のきたなさを学び、成長してゆく。

祖母の家にはヌリアという、不発弾で片手を失った従妹が居た。父親は自殺し、母親も不倫のあげく家を出てしまった、とても不幸な少女なのだが、実は生きてゆくために女の武器を活用するという、とんでもないことをしていたのだ。

これが第2の問題。ヌリアはまだ小学生という設定ですぜ。森でアンドレウを誘惑するシーンもあるし、チャイルドポルノのコードに抵触するんじゃないのか? たとえ抵触しないとしても、これじゃアカデミー賞にノミネートすらされないと思う。

「パンズ・ラビリンス」とか「デビルズ・バックボーン」といった、スペイン内戦がらみの作品には魅力的なものが多く、本作も独特の雰囲気を持っていただけに、もう少し世界配信ということに気を配って欲しかった。

こんなことなら、ペドロ・アルモドバル監督の「私が、生きる肌」をスペイン代表作品に選ぶべきじゃなかったのか、なんて今さら遅いけど。


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