サラの鍵 [映画(さ)行]
満足度 ★★★★★
ああ… せつない。今思い出しても涙が出そうになる。
ジャーナリストのジュリアは、夫が祖父母から譲り受けたパリのアパートで暮らすことになるが、ある記事の取材中、かつてそこにはユダヤ人一家が暮らしており、1942年の一斉検挙で強制退去させられていたことを知る。
検挙の朝、一家の長女サラは、弟を納戸に隠して鍵をかけた。すぐに帰れると信じて。ところが、彼らが連れて行かれたのはヴェル・ディヴ(冬季屋内競輪場)で、13000人もの人々と共に、飲料水すら充分に与えられぬまま、そこで5日間も過ごさなくてはならなかった。
その後、強制収容所に送られたサラは、看守の隙をついて脱走した。納戸に閉じ込めてしまった弟を助けたい一心で。彼女は無事にパリへ戻れたのか?弟はどうなったのか?ジュリアはサラの足跡を追い、ニューヨークへ、そしてフィレンツェへと足をのばす。
物語は、現在と過去とを往き来しながら、戦争に運命を翻弄された一人の女性の壮絶な人生を描いてゆく。ついに現在と過去とがつながった時、ジュリアの人生も大きな転換期を迎えていた。
実に観ごたえのある重厚なヒューマンドラマだった。サラが成人してからの行動を見れば、彼女がどれほど心に深い傷を負っていたかがわかる。生まれた時代が少しでも遅ければ、彼女の人生はまったく違っていただろうに。そう思うと、せつなさで心が一杯になった。
この作品が公開されたのは昨年12月。その数ヶ月前、同様にヴェル・ディヴ事件を描いた「黄色い星の子供たち」という作品が公開されている。奇しくも同じ年に2作品で相次いで描かれることになったこの事件は、ナチス占領下にあったとはいえ、フランス政府がホロコーストに手を貸してしまったという点で、フランスの歴史における汚点とされている。もっとも、政府はつい最近まで自分たちも被害者という立場を貫いていたようだが。
ヴェル・ディヴは、その後火災により焼失し、跡地には内務省のビルが建っているようだ。そのビルの前に立って、「ずいぶん皮肉な話ね。」と吐き捨てるように言ったジュリアの言葉がとても印象的だった。
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タグ:映画 サラの鍵 感想
コメントしずらいテーマです。でも、フランス宣言の背景を重ねて観れば、Kenさんのせつなさ一杯。っての同感できそうな作品なのでしょうかね。重たいな。うん、頑張ろ~。
by 冬瓜 (2013-09-15 19:08)
ヒューマンドラマに謎解きの要素もあって、
声高に誰かを責めたてるのではなく、実に
淡々と語られてゆくのが良かったです。
by Ken (2013-09-17 11:32)