ル・アーヴルの靴みがき @梅田ガーデンシネマ [映画(ら)行]
満足度 ★★★★★
文句なしの5つ星。これは何回でも観たい。
あらすじ(公式サイトのものを少し改変)
北フランスの港町ル・アーヴル。かつてはパリでボヘミアン生活を送っていたマルセル・マルクスだが、今は駅前で靴みがきをしながら生計を立てている。家では献身的な妻アルレッティと愛犬ライカが彼の帰りを待っている。隣近所の人々の温かな支えも、彼にとってなくてはならない大切な宝物だ。そんなある日、港にアフリカからの不法移民が乗ったコンテナが漂着する。警察の検挙をすり抜けた一人の少年イドリッサとの偶然の出会いが、マルセルの人生にさざ波をおこす。同じ頃、妻のアルレッティは医師から余命宣告を受けるのだった…。
人の書いたものにケチをつけたくはないが、「パリでボヘミアン生活」って言われてもなあ… 自由気ままに暮らしてたって意味なんだろうけど、わたしらオヤジには葛城ユキしか思い浮かびませんぜ。
ま、冗談はさておき、アフリカからコンテナに乗ってきた少年は、母の働いているロンドンに行こうとしている。もちろん違法なのだが、マルセルはそれを承知で助けてやろうとするのだ。
移民(難民)問題に対してフランス、とくに前大統領のサルコジは冷徹な姿勢をとっており、不法入国者に食事を与えたりしたらフランス国民でも逮捕されるらしい。
そのあたりの事情は、ロンドンに移住した恋人に逢うためドーバー海峡を泳いで渡ろうとするクルド人青年の物語「君を想って海を行く」に描かれている(レヴューはこちら)。イギリスの方がまだ移民に寛容なので、彼らはまずロンドンを目指すのだろう。
マルセルの企みに隣人たちはすぐに気付くが、だからといって警察に密告したりせず、むしろ一致団結して彼をサポートする。決して裕福ではない彼らにできることなんてわずかなのに、困っている人のため自分にできることを精一杯やろうとする厚い人情には心を打たれる。
逃げた少年を追いかけるモネ警視もいい味を出していた。
「真の悪党には冷酷だが、私にも優しさはあるのだ。」
アキ・カウリスマキ監督の作品には、いかにもスター然とした人は出てこない。どこにでも居る市井の人々の平凡な生活を描きながら、人にとって大切なことは何かを訥々と語りかける作品たちは、見かけこそ質素だが、ダイアモンドのような輝きを持っているのだ。
でも、マルセルたちのやったことは違法なんじゃないの? という無粋な御意見をお持ちの方は、杉原千畝の物語を読んでみるといい。
法は人を守るためにあるもの、法のために人があるんじゃない。
杉原千畝(すぎはら ちうね)
第二次世界大戦中、ナチスドイツのポーランド侵攻により国を追われたユダヤ系ポーランド人たちは、リトアニアの日本領事館に殺到した。彼らはシベリア経由で日本に渡り、そこからアメリカに亡命することを希望していた。領事代理として赴任していた杉原は、外務省からの訓命に反し、不眠不休で大量のビザを発給し、およそ6,000人の避難民を救った。
リトアニア杉原記念館ホームページ
http://www.geocities.jp/lithuaniasugiharahouse/indexj.htm
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タグ:ル・アーヴルの靴みがき
はじめまして。
杉原千畝さんは日本が誇るべき素晴らしい人ですよね。
リトアニアの記念館に行ってみたいです。
by クローヴ (2012-05-29 00:34)
>クローヴ さん
ようこそいらっしゃいました。コメントありがとうございます。
杉原千畝の名前すら知らない日本人がたくさんいます。
教科書にも載っていないし、日本政府が彼の名誉回復を認めたのは、彼の死後14年も経った2000年のことですから、仕方のないことかもしれません。
こういう話を聞くと、いつも杉原さんのことを思い出します。
by Ken (2012-05-29 12:16)
良いことを教えていただき大変ありがとうございましたm(^^)m
映画の御記事もそうですが、いつも「そういう意味があるんだ」とか、「なるほど予備知識があるとより楽しめて観れるんだなぁ」と勉強になりますm(__)m
by DRAGS-007 (2012-05-29 20:56)
>DRAGS-007 さん
恐縮です(汗)
見たり聞いたりしたことに対して、どうしてこうなるんだろうとか、これにどういう意味があるんだろうとか、つい深読みしてしまう癖があるんですよね~
まあ、そういう見方もあるかなあ、てな感じで読み飛ばしてくださいませ。
by Ken (2012-05-29 23:55)