ルイーサ @梅田ガーデンシネマ [映画(ら)行]
満足度 ★★★★
「瞳の奥の秘密」でアルゼンチン映画が大好きになったので、この作品も観ないわけにはいかなかった。例によって岡山での上映予定はなく、朝6時起きして各駅停車の電車で大阪へ。ついでに「レオニー」も観ることにする。今回は逆境に立ち向かう女性シリーズだ。
ブエノスアイレスに住む孤独な女性ルイーサ。家族は猫のティノだけ。まだ夜も明けない朝早くにバスで家を出て、まず霊園に向かう。墓碑には夫と娘の名前があり、二人とも1976年に亡くなっているのがわかる。
1976年といえば、軍事クーデターのあった年。軍が政権を握り、反対勢力に対して血の粛清をおこない、何万もの行方不明者を出した。その時にルイーサは家族を失ったのだろう。彼女の、他人を信じようとしない態度、感情を出そうとしない表情は、そうした過去があるなら納得できる。
彼女は、夫と娘が眠る霊園で電話番の仕事をしている。そして午後からはもうひとつ、往年の名女優の身の回りの世話もしている。その二つの仕事で生計を立てているのだ。毎日が判で押したような生活、棚の置物の位置がちょっとズレていても直さずにはいられない性格。
そんな彼女に、ある日突然、大変な不幸が訪れる。朝起きてみると猫のティノが死んでおり、勤めていた霊園からは近代化のために不要になったと言われ、世話をしてきた女優は引退して田舎に引っ越すという。
つまり、その日彼女は家族と仕事を同時に失ってしまうのだ。
定年まで1年を残して30年勤続したにもかかわらず退職金はなく、もともと貯金もなく、残ったのは20ペソ50センターボだけ。それでは愛猫を火葬してやることもできず、途方にくれるルイーサ。ところが、乗っていたバスが故障して、生まれて初めて地下鉄に乗った時、手っ取り早くお金を稼ぐ方法を思いつく。
話自体は他愛もない話だが、登場人物のキャラクターが際立っていて、演ずる役者たちも芸達者ぞろいなので、そこはかとなくほのぼのと面白おかしい。どことなく「アメリ」や「ミックマック」に近い世界観もあって、アルゼンチン映画の実力をまざまざと見せつけてくれる佳作だと思う。
どん底に突き落とされて、なりふりかまわず金を稼がなくてはならなくなるという状況を観ながら、ハンガリー映画の「人生に乾杯!」を思い出した。もっとも、こっちは年金を止められた80過ぎの老夫婦が生活に窮して銀行強盗をやってしまうというとんでもない話だが。
(TSUTAYAでレンタル可能)
ブエノス・アイーレス(Buenos Aires)とは、「おいしい空気」という意味。空気が澄んでいて活気に満ちた街の雰囲気を映画は良く伝えている。市バスがメルセデスだったのに感心した。また、公衆電話がテレフォニカで、スペインとまったく同じだったのには驚いた。
地下鉄は " Subte " と呼ばれており、スペインの " Metro " とは違う呼び方だった。噂によると、東京丸の内線や名古屋市営地下鉄の払い下げ車両がそのまま使われているらしいが、それらしき車両は確認できなかった。いつか確かめに行ってみたいものだ。
もっともっとアルゼンチン映画を観てみたいぞ~!
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