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ミックマック   @シネマ・クレール [映画(ま)行]

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満足度 ★★★★

天才という言葉は、ジャン=ピエール・ジュネ監督のためにあるのではないかと思う。「アメリ」で世界中にセンセーションを巻き起こした監督の待ちに待った新作。期待を裏切らない素晴らしい作品だった。

バジルはレンタルビデオ店に勤めるサエない男。ある夜、店の前で発砲事件があり、流れ弾が頭に当たってしまう。病院に運ばれたものの、弾は危険な位置にあり、摘出すべきかせざるべきか、脳外科医はコインで決めることにする。

滅菌状態のはずの手術室で、やおらナースがポケットからコインを取り出し、バジルの体の上でトス、「表か、じゃ手術は止めとこう。」というシーン、ドリフのコントのようで面白い。

彼はもう死んだものと思われていたので、アパートは引き払われ、仕事も後任者が決まっていた。さらに運の悪いことに、保管されていた家財道具も何者かに盗まれていた。家も仕事も失ってしまった彼は、路上生活を余儀なくされる。

そんな時、廃品回収で生計を立ているプラカールという男に声をかけられ、彼の仲間のもとに案内される。そこでは、発明家、人間計算機、人間大砲、言語オタクなど、それぞれに傑出した才能を持ちながら、社会からは必要とされていない者たちが、身を寄せ合って生きていた。

人間大砲を演じているドミニク・ピノンと、仲間の料理番を演じているヨランド・モローは、「アメリ」にも出演していて、今回も強烈な個性を発揮しているので、まさに「アメリ」のあの世界を再び体験することができる。

そういえば、アメリが恋をする青年もレンタルビデオ店の店員という設定だった。おそらくジュネ監督は、クエンティン・タランティーノ監督をモデルにしているのではないかと私は思うのだが、どうだろう?(タランティーノ監督が業界に入る前、レンタルビデオ店でアルバイトをしていたという話は有名)

廃品回収を手伝うようになったバジルは、ある日街で兵器製造会社を見つける。彼の父は30年前、アフリカで地雷処理をしていて爆死しているが、その地雷を作ったのがまさにその会社だった。そして、その向かいには自分の頭に撃ち込まれた銃弾の製造会社もあった。

そこで彼は決心する。自分の人生を狂わせてしまった二つの兵器会社に復讐してやろうと。もちろん仲間たちも協力を惜しまない。これまで社会から必要とされてこなかった彼らにも、やっと役立つ時が来たのだ。果たしてうまくゆくのか?という話。

クラシカルな映像は「アメリ」そのもの。「アメリ」を好きな人は、本作も必ず気に入るだろう。コミカルな物語の中にもピリリとした毒が隠されていて、独特の世界が繰り広げられる。フランスの文化の深さをあらためて教えてくれる秀作。


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コメント 2

daiyuuki

アメリの可愛い不思議なユーモラスな世界がまた楽しめるのかと思うと、楽しみです[わーい(嬉しい顔)] ブラックユーモアもあるし個性的なキャラクターも楽しめそうですね[わーい(嬉しい顔)] マチェーテと並んで見たい映画ですね[わーい(嬉しい顔)]
by daiyuuki (2010-11-10 17:06) 

Ken

「アメリ」の おっさん版かと。
ただ、あれほどのインパクトはありませんが。
by Ken (2010-11-10 22:00) 

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