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マイ・ブラザー   @MOVIX倉敷 [映画(ま)行]

BROTHERS

 

 

 

 

 

 

 

 


満足度 ★★

「死んだはずの兄が、別人になって帰ってきた。」

このコピーを見て、「ジャック・サマースビー」みたいな作品かと思ってしまったが、サスペンス的要素はまったくなかった。まぎらわしい表現はやめてほしいな、まったく・・・

主人公のサムは子どもの頃から優等生で、ハイスクールではアメフトのクウォーターバックとして活躍、当時チアリーダーをしていたグレースと結婚し、二人の娘と幸せに暮らしていた。海兵隊将校であった父の意思を継いで海兵隊に入っている。

一方、サムの弟トミーは、幼い頃からあまり出来が良くなく、常に兄と比較されていたせいか、グレてしまい、銀行強盗をはたらいて服役していた。親族にとっては鼻つまみの存在だが、兄のサムだけは優しく、出所してくる彼を喜んで迎えに行ってやる。

どの子にも同じ様に接しなくてはならない、それは子を持つ親の鉄則である。それがサムとトミーの父にはできなかった。海兵隊としてヴェトナム戦争に派兵され、そこでの常軌を逸した出来事がトラウマとなって、帰還してからも家族に優しくできなかった、というのは言い訳にしか過ぎない。どんなに辛いことがあっても、家族の顔を見たら、そんなことどうでもよくなる、というのが本来の父の愛だと思う。

トミーが出所して間もなく、サムはアフガンに出兵するが、そこでヘリコプターが撃墜され、捕虜となってしまう。何ヶ月も行方不明のサムは、死亡したものとみなされ、家族の元には死亡通知が届けられる。哀しみに打ちひしがれるサムの家族。そんな時、彼らを支えたのは出来の悪いはずの弟だった。トミーを父のように慕う娘たち、いつしかグレースも彼に惹かれてゆく。

居間でU2を聴きながら、「ハイスクールの頃、これをよく聴いたよ。」と話すトミーに、「あら、私もよ。」と応えるグレース。「え?そうだったのか?俺はてっきりINXSを聴いていたのかと…。」そして彼の喫っていたタバコ(マリファナだったかも?)を取り上げて自分も喫う。それがきっかけで一気に二人の距離が縮まるというシーンが印象的だ。

INXS(インエクセス)というのは、80年代に活躍したオーストラリアのバンドで、オシャレなビジュアルから、特に女の子にはカリスマ的な人気を誇っていた。U2のファンからは、軟派なバンドとして見下されていたはずで、不良学生だったトミーは、優等生だったグレースのことを、「どうせINXSでも聴いてキャーキャー言ってんだろ。」という風にしか見ていなかったのだろう。意外にもそのグレースがU2を聴いていたということがわかり、彼女のことを見直すのだ。

死んだと思われていたサムが帰還してくるあたりから、物語は不快指数を加速させてゆく。

戦争のトラウマを家庭にまで持ち込むという弱い父親の系譜は、サムにも引き継がれていた。彼のアフガンでの壮絶な体験がいかに彼の心を蝕んだかはよくわかる。しかし、それは生きて家に帰るためではなかったのか?やっとの思いで帰って来れたのに、どうして家族に心を閉ざす必要があるのか?僕には居場所がないって?なければ自分でつくれ!甘ったれてんじゃない!と、思わずスクリーンに向かって怒鳴りそうになった。

我々の祖父の世代も戦争を経験している。自らすすんでは語りたがらないが、想像を絶する体験をした方々の話はたくさん聞いたことがある。家族には話せないようなことに手を染めた方の話も知っている。戦争だから、仕方がなかったのだ。それでも、戦争が終われば、忌まわしい記憶には口を閉ざしたものの、家族に対して心を閉ざしたりはしなかった。むしろ家庭は汚れた過去を忘れさせてくれる場所だった。祖父たちはそうやって戦後を過ごしてきたのだ。

だから、サムの生き方にはまったく共感できないし、この作品の後半部分には不快感しか感じられなかった。

作品全体としてはつまらないと思うが、サムの妻グレースを演じたナタリー・ポートマンの演技は素晴らしかった。そして特筆すべきは娘のイザベル役のベイリー・マディソン、まだ幼いのに恐るべき演技力を持っている。今後が非常に楽しみな天才子役だ。


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マイレージ、マイライフ   @岡山メルパ [映画(ま)行]

UP IN THE AIR

 

 

 

 

 

 


満足度 ★★★★

ウィットに富み、そしてちょっぴり哀しい、大人のための寓話。
こういう作品をハリウッドはもう忘れてしまったのかと思っていた。

ジョージ・クルーニー演じるライアンは、リストラ宣告請負人。ある会社でリストラの必要が生じた時、会社にかわって職員にそれを宣告するプロだ。全米各地を飛び回るので、貯まるマイレージは半端じゃない。

彼の夢は1000万マイルを達成すること。それが叶ったら、機長と話ができて、自分の名前が刻印されたカードをもらえるのだ。これまでに達成できた人は6人しかいないので、自分がいつか7人目になる日を夢見ている。

1年のうち家にいるのは40日ほどで、それ以外はずっと飛行機で移動しているライアン。飛行機が家みたいなものだから、家は持たない。どうせ死ぬ時は一人なんだから、家族も要らない、だから結婚もしない。バックパックに入らないようなものは人生に必要ないと豪語し、Mr. empty backpack と呼ばれることを喜んでいる。

ライアンと他の登場人物との会話が粋で楽しい。
たとえば、キャビン・アテンダントとの会話。

"Do you want a can, sir?"  
"Whaaaaat?!"

「缶ビールを召し上がりますか?」と訊かれているのだが、
ライアンには、"Do you want a cancer?"、つまり「癌を召し上がりますか?」と聞こえてしまう。これは可笑しい。

1000万マイルを達成した時、機長から尋ねられる。

"Where are you from?"  「どちらにお住まいですか?」
"I came from here."   「ここ(飛行機)です。」

これも可笑しい。言ったあとのジョージの笑顔もいい。

旅の達人、マイレージの達人として独り身の生活を大いに楽しんでいたライアンだが、自分と同じ様に飛行機で飛び回っているアレックスという女性と出会ってから、自分を見つめなおすことになる。

アレックスは、自称「あとくされのない女」。逢いたくなったら電話して、逢えばベッドを共にするが、それ以上は求めない。彼にとってはこの上なく都合の良い "casual" な存在で、私生活もきっと自分と同様だと思っていた。

しかし、いろいろあって人恋しくなり、シカゴに住むアレックスの家を訪ねてみると、子どもや夫に囲まれて楽しそうに暮らす彼女の現実の姿があった。ショックを受けるライアン。これまで何の疑いも持たずに守ってきた自分の生活信条が揺らぎはじめる。自分は甘かった、アレックスの方が現実をきちんと見ているのかもしれない、と。

オリジナル・タイトルは "Up In The Air" 、いつも空を飛んでいるライアンの生活を表わすとともに、これからの人生の答えが宙ぶらりんであることも表わしている。

この素晴らしくウィットに富んだタイトルを、「マイレージ、マイライフ」なんていう薄っぺらい邦題に変えてしまう配給会社のセンスに、ぜひともラジー賞を差し上げたい。

久しぶりにこの曲が聴きたくなった。


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ミレニアム / ドラゴン・タトゥーの女   @シネマ・クレール [映画(ま)行]

DRAGON



















満足度★★★★

いや~、久しぶりに おなか一杯になった。
スウェーデン発のサスペンス映画、内容てんこ盛りだ。

このヒロインのカッコ良さといったら・・・
このキャラだけで半分は成功したようなもの。

原作の小説は3部作となっており、映画の方も既に続編が出来上がっているようだから、まだまだ楽しませてくれそうだ。
う~、次が待ち遠しいぞ!

スウェーデン発のサスペンスといえば、1970年代にマルティン・ベック・シリーズというのがあって、高校生の頃に何冊か読んだ憶えがあるが、その中の「笑う警官」は、舞台をサンフランシスコに移してハリウッドで映画化されている。

主演のウォルター・マッソーがとても良い味を出していた秀作で、WOWOW創始期に放映されていたのを録画したビデオテープは、今でも宝物のように大切に保管している。

昨年、同名タイトルの角川映画が封切られたが、問題外の凡作だった。タイトルもモチーフもマルティン・ベック・シリーズを意識したようだが、よく本家が怒って来なかったものだと、むしろそっちの方に感心した。

ウォルター・マッソーは、やはり昨年リメイクされた「サブウェイ123」のオリジナルである「サブウェイ・パニック」でも素晴らしい演技を見せていた。コメディからサスペンスまで、彼の主演した映画には駄作がないと言っても過言ではないので、ウォルターの主演作品をリメイクしようなどとは考えん方がよろしいぞ。

昨年10月に観たイタリア映画の秀作「湖のほとりで」も、原作はノルウェーのサスペンス小説だった。北欧発のサスペンスからは、当分目が離せそうにない。

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マーターズ MARTYRS [映画(ま)行]

マーターズ.jpg
満足度 ★★

「観るんじゃなかった・・・」
そう思ったのは、パゾリーニの「ソドムの市」以来だ。

年が明けてから、「アバター3D」、「フォース・カインド」と、たて続けにビミョーな作品を劇場鑑賞してしまい、なんか今年は幸先悪いなあ、レンタルでものぞいてみるか、と思ったのが運の尽きだった。

新作棚でピッカピカの「マーターズ」が、さあ早く私を連れてって、とばかり微笑んでいたのだ。そうか、とうとうレンタル解禁になったのか。でも、今年最初のレンタルがこれじゃ、ますます幸先悪くなりそうだぞ、ひとまず心を落ち着けて、グルッとひと回りしてから考えよう。などと、いちおう逡巡してはみたのだが、気が付いたらこれを持ってカウンターに並んでいた(苦笑)。美女二人が何を見ているのか、とっても気になったもので。

"ONE OF THE MOST FEROCIOUS HORROR FILMS EVER MADE" の謳い文句に偽りはない。脳内不快指数メーターは、しばしば振り切れ、途中で何度も停止ボタンを押しそうになった。不条理な拷問シーンを延々と観せられるのは、それ自体が拷問に近い。

「ハイテンション」、「フロンティア」、「屋敷女」に続くフレンチ・スプラッター最終兵器、なんていう売込みをされていたが、私はそれほどのクオリティだとは思わなかった。前3作品に比べると、ストーリーが薄っぺらいし、何よりもオリジナリティに欠けている。特に、最後の方なんか、「ヘルレイザー」そのものだったし。

他人のフンドシで相撲をとっているようでは、まだまだ一流とは言えない。エンドロールの「ダリオ・アルジェントに捧げる」というあざとい文言もどうかと思う。

『ハリウッドはロジェ監督の才能を高く評価し、「ヘルレイザー」のリメイクを依頼・・・・・ 』

おいおい、とりあえず次回作の出来を見てからにした方がいいんじゃないのか?

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湖のほとりで   @シネマ・クレール [映画(ま)行]

LAKE







満足度 ★★★★

イタリア映画を観るのは久しぶりだ。この映画は、何が何でも劇場で観なければと思っていた。午前中の仕事を終え、昼食抜きでシネマクレール丸の内に飛び込んだ。

シネマクレールというのは、岡山にあるミニシアターで、シネコンが見向きもしないような地味な作品を密かに上映してくれる岡山映画界の良心、いわばホテル・ルワンダのような存在のこと。
(ちなみに、来月封切られる「あの日、欲望の大地で」も、当地のシネコンでは上映されず、シネマクレールのみでの上映となっている。地方都市のシネコンほど存在価値の乏しいものはない。)

湖のほとりにある北イタリアの静かな村。誰からも慕われていた美しい娘アンナが、ある日湖畔で死体となって発見される。

イントロダクションは、「ツインピークス」を想起させる。
TWIN PEAKS
1990年代初頭、「世界で最も美しい死体」というキャッチコピーで一世を風靡したローラ・パーマーの物語。







しかし、今回の犠牲者アンナの死体は、ローラよりももっと美しい。まるで眠っているかのように湖畔を向いて横たわり、苦しんだ様子は全くなく、むしろ死を受け入れて安堵したような表情を見せている。

その様子から、顔見知りの、しかもアンナと愛し合っていた者の犯行ではないかという疑いのもと、町から初老の警部が捜査責任者として送られてくる。

物語は警部の視点で静かに進行する。印象的なのは、この警部がラストシーンまで笑顔を見せないことだ。もちろん、事件を解決しなくてはならないという責務からでもあるが、自身も「とても笑ってられない重大な悩み」を抱えているのだ。

彼の奥さんは若年性認知症で入院している。治る見込みはなく、健忘症状はかなり進行していて、娘の居ることさえ忘れてしまっている。娘を悲しませたくないので、少しずつ良くなってるよ、という見え透いた嘘でごまかしているが、娘はとっくに察知していて、それで父娘の関係もギクシャクしている。(なぜ娘が母親を病院に見に行かないのかという疑問はあるが、そこは眼をつぶっておこう)

湖の向こうにアルプスの山々を抱いた村の情景はとても美しい。そして、その美しさを損なわせない、抑制をきかせた演出が、とても素晴らしいと思った。
大袈裟に泣き叫ばなくても哀しみは伝わるし、大声で怒鳴らなくても怒りは表現できるのだ。

そしてもうひとつ、セリフに無駄がなく、ウィットが効いているところも特筆すべき点だろう。
たとえば、女性検事との会話はこんな風だ。

「警部さん、奥さんはいらっしゃって?」
「いますよ。」 (別居してるけど)
「きれいな方?」
「まあね。」  (認知症だけど)
「そんなに頑固で、よく結婚できましたね。」
「昔はそんなじゃなかったんだ。」

事件が解決した時、警部は娘さんを病院に連れて行き、お母さんの現実を見せる。病状はさらに進行し、もはや娘どころか夫が居たことすら忘れてしまっていて、入院患者の男性と仲睦まじく寄り添いながら歩いている。その姿を見て、二人はむしろ安堵の表情を見せる。家族である自分たちを忘れてしまったのは哀しいけれど、愛する男性が見つかって今が幸せならばそれでいい、そんなところだろうか?

家族とは喜びだけでなく哀しみも共有してくれる存在である、ということに気付いた警部は、このラストシーンで初めて笑顔を見せるのだ。
きわめて地味だが、味わい深い名作だった。


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