東ベルリンから来た女 @シネマクレール [映画(は)行]
満足度 ★★★★
スノーシーズンが終わり、むさぼるように映画を観ております。レヴューを書く暇もないほどに。
久しぶりのドイツ映画。ウザいナレーションで説明過多になることなく、これ見よがしの音楽と役者のオーバーアクションで無理に話を盛り上げることもなく、実に淡々と物語は進んでゆきます。こういう大人のヨーロッパ映画の手法を、我が国の映画製作者も見習うべきでしょう。
舞台はベルリンの壁崩壊前の東ドイツ。美しいけれど周りの誰にも心を開かない女性医師バルバラが、田舎町の病院に赴任してきます。それを病院の窓から見ている二人の男。彼らの言動から、一人は秘密警察、もう一人は彼女のことを監視する役目の上司だとわかります。
どうして監視される羽目になったのか、それはその後の彼女の行動から少しずつわかってきます。必要最少限のヒントを与えて観客に推理させようという、大人の映画なのです。音楽らしい音楽もなく、セリフも簡素なので、気を抜いていると話についてゆけなくなります。
実は、監視役の上司アンドレもかつては大都市の病院に勤務していたのですが、ある事件がきっかけで田舎町に追いやられていたのです。出世の道を閉ざされてもクサることなく、患者と真摯に向き合い、医学研究にも力を注いでいる彼の生き方に接して、頑なに心を閉ざしていたバルバラは少しずつ心を開いてゆきます。
医師としてのバルバラは、アンドレに負けず劣らず優秀です。強制労働所から脱走して草むらに何日も隠れていた少女が興奮状態で搬送されてきた時、ちょっと診察しただけでマダニによる髄膜炎と見抜いてしまうのです。
医師として優秀なだけでなく、彼女は病める者の傍に寄り添い家族のように接するという広い心も持ち合わせていました。強制労働所の少女との出逢いは、彼女の心の中に大きな変化をもたらすことになります。
最後に彼女の選んだ選択には驚かされますが、そこに至るまでの経緯を観ているので、彼女の行動はすんなり納得でき、晴れやかな気持ちで映画館を後にすることができました。いつまでも余韻の残る良い作品だったと思います。(邦題はカスですが)
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内容読んで観てみたくなります。
by 冬瓜 (2013-09-15 16:28)
こういう大人のヨーロッパ映画が好きです。
by Ken (2013-09-17 11:33)