SUPER 8 @TOHOシネマズ岡南 [映画(さ)行]
満足度 ★★
なんか平凡だったなあ。それ以外に言葉が浮かばない。
最初に濃厚なスープが出てきて(冒頭の列車事故のシーン)、こりゃなかなか美味しい料理が食べられるぞ、と期待させたのに、その後はオードブルがちょこちょこ出てくるだけで、結局メインディッシュなし、そんな感じだった。
家庭用ビデオなどまだ普及していない時代、コダックのスーパー8という8ミリカメラで自主製作映画を撮っている映画好きのキッズが主人公。
J.J.エイブラムス監督やスティーヴン・スピルバーグ監督の幼い頃が彼らの姿に投影されているに違いない。
テレビではスリーマイル島の事故を報じているから、1979年のようだ。ガソリンスタンドの店員が発売されたばかりのウォークマンを聴いていて、警官から「なんだ、ラジオなんか聴いているのか?」と言われるのが面白い。
初代ウォークマンは、カセットテープ式だったから、当時の人が見たらトランジスタラジオ(もはや死語ですな)に見えたのだろう。
ウォークマン1号機と、SONYが東京通信工業だった頃の名機TR-55
そのシーンで店員が聴いていたのが、ブロンディの「Heart Of Glass」。懐かしさのあまり、当時の言葉なら「胸キュン」になった。
若い頃あれほど魅力的だったデボラ・ハリーも、「死ぬまでにしたい10のこと」では生活に疲れた母親を演じていて、あまりの変わりように愕然としたよなあ、と思わず遠い目に。
ブロンディの他にも、ザ・ナック「My Sharona」、エレクトリック・ライト・オーケストラ「Don't Bring Me Down」、コモドアーズ「Easy」、ウィングス「Silly Love Songs」と、使われている音楽はすべて当時のものばかり。
ストーリーの方も、「未知との遭遇」、「グーニーズ」、「スタンド・バイ・ミー」、「E.T.」などを少しずつ思い起こさせるように作られていて、70年代後半から80年代をリアルに知っている者を懐かしい気分にさせてくれる。
ところが、そんな正方向へのバイアスがかかっているにもかかわらず、観終わった後の感想は、平凡でつまらない、としか言いようがないのだ。何のバイアスもなく観た40歳未満の人たちはどう感じたのだろう?
つまらなかった原因の一つは、「クローバー・フィールド」で見たような醜悪な地球外生物。あれじゃとても子どもたちと意思疎通なんてできそうにないし、彼らとの絡みをちゃんと描かないまま、「MIB」みたいなエンディングに突入してしまったから、物語に入ってゆけなくなった。
J.J.エイブラムスという人は、「心の旅(Regarding Henry)」のような秀逸な脚本を書いたかと思うと、「アルマゲドン」のような世紀の駄作も書いていて、作品の出来に相当なバラツキのある人だ。今回はどう考えても「アルマゲドン」寄りの脚本だった。
しかし、何といっても、スピルバーグ監督との「楽屋オチ」が見えてしまったことが、シラけた最大の原因ではないかと思う。あそこまでヨイショするなら、列車に突っ込む運転手の役を、リチャード・ドレイファスにすればよかったんだ。
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「楽屋オチ」って、そのとおりだと思います〜!
スピルバーグとJJは満足でしょうね。
あ、主人公のお父さん役の人は、古くさい顔をしていて良かったです。
by のむら (2011-07-25 22:06)
主人公のパパね、たしかに昭和顔でした。
「スタスキー&ハッチ」を思い出しましたもん。
by Ken (2011-07-25 23:04)
Kenさんの書かれてる通り、偶然にも79年はスリーマイルアイランド原発事故の発生と同年ですよね。で、私の感想ですけど…この作品の一番の魅力は…ユーモラスで向こうみずで、勇敢な少年ですね。又は、思春期の大人ぶったエルファニング演じる少女に甘酸っぱい感じの懐かしさよみがえっちゃいました。私もストーリーのキー「何か」の正体を最後まで引っ張り捲った“観る私の想像掻き立てた”割には、あと一歩踏み込んだ関わりを期待しました。
今の震災による「触れてはいけない、未知なる何か」は…未知なるモノへの人間の傲りと愚かさなのかも、知らされた気がにも成りました。
by でかのすけ (2011-08-19 16:42)
追記です。私自身がSF物やスピルバーグが嫌いなんですね。確かに「心の旅」当時のエイブラムスは素晴らしかったです。彼自身の作品が変化したのはかなりのあくまでもの予想ですよ。今回の震災直後に、カントの「崇高」理論を思い浮かべませんでしたか?
この映画から学んだことは…「決着しない優柔不断と身勝手な、自然界無視の循環システムの根底にある“より良くより多くを造り、より多くの消費するという資本主義”の増殖したモノが絡んでませんですか?」原発はそうした資本主義のメタファを誰しも予測する以前に、考える余地のない気が付いたら生物に都合よい循環を超えて仕舞う結末に至った経過にて、変化せざる得ないロールプレイからの最終的なフェーズとしてのエイブラムスの「メッセージ」と捉えると楽しめる映画になり得るかも知れないですよね。うまく伝わるといいんですけど、すみません。ね。
by でかのすけ (2011-08-19 18:35)