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プレシャス   @新宿武蔵野館 [映画(は)行]

PRECIOUS

 

 














満足度 ★★★★

先週末は研修のため上京。さて、土曜の夜をどう過ごそう?ブルーノート東京も新宿ピットインも、スケジュールを覗いてみたがイマイチそそられなかったので、新宿武蔵野館で映画を観ることにした。ちょうど「プレシャス」の初日だった。

土曜の夜にしては新宿に人が少ない。そうか、ワールドカップ・サッカー対オランダ戦の日だった。映画の観客は11人、偶然にもサッカーチームと同じ人数だ。非国民となじられようとも映画の方を選んだ熱き血のイレブン、一緒に楽しもうぜ!そう心の中で叫んだ。

舞台は1987年のニューヨークハーレム。主人公のクレアリース・"プレシャス"・ジョーンズは、大切な宝物(プレシャス)という名前を持って生まれたにもかかわらず、不遇な人生の真っ只中にあった。

16歳にして既に2度目の妊娠、母親の恋人つまり戸籍上の継父にレイプされた結果だった。その継父は家族を捨ててどこかに消えており、プレシャスは母と二人で生活保護を受けながら暮らしている。母親にとって、娘は恋人を寝取った恋敵、だから娘のことが憎くて仕方がない。一日中テレビの前でタバコをくゆらしながら、家事の一切をプレシャスに押し付け、気に入らないと怒鳴りつけたり物を投げつけたりする。

この過酷な家庭環境にあっても、プレシャスは生きる希望も勉学への情熱も失わず、いつか自分が人気者になれる日を夢見ている。
彼女が夢を見る時、場面がミュージカル風に変わる。眼を閉じている間だけは現実を忘れることができるのだ。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のセルマのように。

しかし、2度目の妊娠をしたことで、彼女は学校を追い出されることになる。新たな学び舎として提示されたのは"EACH ONE, TEACH ONE"というフリースクール。普通の学校に馴染めなかった子どもたちのための代替学校だ。

最初は気がすすまなかった代替学校も、レイン先生という素晴らしい教師のおかげで、かけがえのない場所になる。先生は、家を飛び出して住む所のなくなったプレシャスを一時的にあずかり、文字の読み書きができなかった彼女に根気良く教え、互いのことに無関心であったクラスメートたちに人を思いやる気持ちを学ばせる。

読み書きができない、誰も愛したことがない、誰からも愛されたことがない、というプレシャスの三重苦が、レイン先生の愛情によって徐々に解かれてゆく過程は、ヘレン・ケラーとサリバン先生の物語に似ている。

レイン先生を演じたポーラ・パットンが実に素晴らしい。アカデミー助演女優賞は母親役のモニークが獲っているが、むしろポーラにあげてほしかったと思う。

重要な脇役として、ソーシャルワーカー役のマライア・キャリー、男性看護師役のレニー・クラヴィッツが登場するが、プレシャスが眼を閉じて夢見るミュージカル風のシーンで彼らが歌ってくれなかったのは少し残念だった。あくまでも役者としての出演ということだったのかもしれない。

上映が終わり、武蔵野館で一期一会の出会いをしたイレブンは、互いに言葉を交わすこともなく、それぞれの家路についた。しかし、この映画を一緒に観た夜のことは、一生忘れないだろう


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