フローズン・リバー @シネマ・クレール [映画(は)行]
満足度 ★★★★★
これは今年度のベストかもしれない。(まだ2月だけど)
観終わった後も、ジワジワと温かいものが込み上げてきて、すぐに、もう一度観たいという気にさせてくれるような、素晴らしい作品だった。
物語の主人公は二人の女性である。プア・ホワイトとネイティヴ・アメリカン、人種も境遇もまったく異なる二人だが、彼らには唯一の共通点があった。夫が居なくなり、自分一人で家族を守ってゆかなくてはならないという状況だ。
普通ならば接点の無さそうな彼らが、ふとしたきっかけから、手を組んで危険なビジネスに手を染めることになる。家族を養うため、違法とわかっていてもやるしかなくなったのだ。
しかし、悪事が長続きするはずがない。これで最後にしようと決めたヤマで警察に追われる羽目になる。逃げ場を失い、先住民居留区に逃げ込んだ二人は、そこで究極の選択を強いられる。
主演のメリッサ・レオ(「21グラム」のあの人だったのか)もいいが、息子役のチャーリー・マクダーモット(「ヴィレッジ」のあの子だったのか)の演技が特に光っていたと思う。
脚本も自身で書いたというコートニー・ハント監督の才気を強く感じさせる秀作だった。ストーリーにスキがなく、運びもテンポ良く、何よりもエンディングが素晴らしかった。次回作が楽しみだ。
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パラノーマル・アクティビティ @TOHOシネマズ岡南 [映画(は)行]
パブリック・エネミーズ @TOHOシネマズ岡南 [映画(は)行]
満足度 ★★★
1933年大恐慌時代のアメリカ、FBIからパブリック・エネミーズと謳われたジョン・デリンジャーの物語。
というと、今から30年以上前に観たジョン・ミリアス監督の「デリンジャー」を思い出す。
主役を演じたのはウォーレン・オーツ。「ワイルド・バンチ」でガトリング・ガンをぶっ放し、「ガルシアの首」で汗と埃にまみれながらメキシコの大地を駆けずり回った彼にはピッタリの作品だった。
ジョン・ミリアスは、デリンジャーとFBI主任捜査官パーヴィスとの男の友情を主軸に描いた。追う者と追われる者との緊迫した闘い、パーヴィスはデリンジャーに何度も煮え湯を飲まされ、憎しみをつのらせるが、その半面で二人の間には奇妙な友情が芽生えてゆく。
仲間を絶対に見捨てない、裏切らない、体制には徹底的に歯向かうが、民衆には決して手を出さない、そんなデリンジャーの男気に惹かれたのも無理はない。
パーヴィスの執拗な追跡により、デリンジャーは徐々に仲間を失い、追い詰められてゆく。そしてついにデリンジャーが銃弾に倒れた時、パーヴィスは任務を果たせたことを喜ぶより、友を失ったことを哀しむのだ。ハードボイルドかつ男臭い秀作で、今でも心に残っている。
話を「パブリック・エネミーズ」に戻そう。
ジョン・ミリアスが男の友情をテーマに描いたことを、マイケル・マン監督は当然知っているはずであるから、同じテーマではいけないと考えたのだろう。だから、今回は恋人ビリーとの愛の物語になっている。
ビリーと初めて出逢うクラブでバックに流れる曲は「バイ・バイ・ブラックバード」、もしやこの声はダイアナでは?と思っていたら、ステージにダイアナ・クラールその人が立っていたので驚いた。
「バイ・バイ・ブラックバード」は、エンディングでも効果的に使われている。歌詞の意味を知っているだけに、なおいっそう心に染み入る。他にも、「ザ・マン・アイ・ラヴ」など、ジャズのスタンダードがふんだんに使われていて、ジャズ好きにとっては音楽も同時に楽しめる趣向になっている。
ギャングが主役の映画だから、銃撃戦は頻繁に登場する。これが極めてリアルに描かれていて感心した。ライフル、マシンガン、ショットガンで弾痕の大きさを変えてあるし、人が撃たれた際の銃創も、射入口や射出口の状態、周囲の火薬輪、創口から拍動性に流れ出る血液など、かなりこだわって作ってあるのがわかる。リドリー・スコット監督の「ブラックホーク・ダウン」を想い出した。
しかし、核となるべきデリンジャーとビリーとの愛の描写が実に中途半端だし、いたずらに上映時間が長く、映画全体としては冗長で消化不良な印象を受けた。宿敵パーヴィスを演じるクリスチャン・ベイルも存在感が薄い。ジョニー・デップのオーラが強すぎるのかもしれないが。
ビリー役のマリオン・コティヤールは、若い頃のジャクリーン・ビセットに似ていて、とても懐かしい感じがした。そういえば、ジャッキーの消息をまったく聞かないが、今頃どうしているのだろう?
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