フィフティ・フィフティ 50/50 @TOHOシネマズ岡南 [映画(は)行]
満足度 ★★★★☆
今年、最も「ほっこり」させられた作品。地味だけど心に響く。
主人公のアダムはラジオ局に勤務する27歳の男性。酒もタバコもやらず、部屋が散らかったり仕事に遅刻したりすることを嫌う几帳面な性格。もちろん健康にだって気を遣っていて、毎朝のランニングを欠かさない。
冒頭で、街を走るアダムをカメラが追い、ちょっとひと休みする彼の後ろにシアトルのシンボルである高層タワー、スペース・ニードルを垣間見せて、ああシアトルが舞台なんだとわからせるようにしているのがいい。文字やナレーションを安易に入れてしまう説明過多な作品があまりにも多いので。
そして、主人公がアメリカ人なのに車の免許を持っていないという設定もユニークだ。彼の言い分はこうだ、「交通事故は死因の5位で、ガンと変わらない、だから僕は車の運転はしない。」と。
その、誰よりも健康に気を遣い、交通事故の危険を避けているはずのアダムが、脊髄のガンに冒されていることがわかってしまう。何という皮肉。悲運に打ちひしがれる彼だが、努めて平静を装おうとする。むしろ本人より周囲の方が取り乱してあたふたするわけで、その様子を意識的にコミカルに描いている。そのように、難病ものをあえてコメディ仕立てにする演出が素晴らしい。
しかも、作品のあちこちに仕掛けが施されていて、それに気付くとかなり楽しめる。
まず、アダムのお母さん役のアンジェリカ・ヒューストンは、お化けの一家を描いた映画「アダムズ・ファミリー」で母親役を演じていた人だ。息子の名前をアダムにしたのは意図あってのことだろう。
それから、アダムの家の番地を表すプレートが何度も映されるのだが、その数字が「404」だった。何かをググった時にヒットしないと、「404 Error」と出てくるアレに引っ掛けてあったと私は思うが、どうだろう?
タイトルの『50/50』とは、アダムの病気の5年生存率が50%というところからきている。でも、このタイトルを見るたびに、ヴァン・ヘイレンの「5150」を思い出すのは私だけではないだろう。ちなみに、「5150」とは、「犯罪を犯す可能性の大きいクレイジーなヤツ」というLA市警の暗号コード。ヴァン・ヘイレンのファンなら知っているその意味をシャレたに違いない。
ヴァン・ヘイレンのオフィシャルサイトで手に入る5150 Tシャツ。
とまあ、深読みし過ぎかもしれないが、随所に散りばめられたシャレと軽妙な掛け合いで楽しませてくれる、上質な大人のコメディだったと思う。
シアターからの帰り道、昔テレビで観た「ガンかて笑って死ねるんや」というドラマを思い出した。国立大阪病院耳鼻咽喉科部長であった中村氏の前向きなガン闘病記で、この作品同様、悲劇をコミカルに描いていてとても新鮮だった。たしか、主題歌は坂本 九さんだったなあ。もう一度観たくなった。
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如何なる難病でも笑って死に絶えー
by でかのすけ (2011-12-27 13:56)
何で死ぬにせよ
最期は笑顔で過ごせたらいいですね。
自分にそれができるかどうか。
by Ken (2011-12-28 08:58)
あら、ひさびさに来ました♪
自分ヤケクソなコメントしとりましたのですね。はい、未だ幸せモノですよ。マジで(ん?どっかで聞いたセリフやなぁ。(笑))すみませんんっ素!!!
by でかのすけ (2012-06-08 21:32)
然し、死に向かう時に「笑顔」と云うのも……うーん、かなり抵抗あるかもですね(^^);んでね♪なる程、バンヘイレン5150は有り得ますよ。
by でかのすけ (2012-06-09 09:00)
>でかのすけ さん
この世に未練たらたらで見苦しい死に方をするのも
またいいんじゃないかと、最近はそうも思います。
by Ken (2012-06-09 10:34)
ふむふむ、見苦しい逝き方もアリなのですね。では、見苦しい生き方もアリなのですね。
by 冬瓜 (2013-09-15 13:25)
見苦しい生き方、全然アリじゃないでしょうか。
by Ken (2013-09-17 11:44)