モンガに散る @シネマサンシャイン大街道 [映画(ま)行]
満足度 ★★★★
台湾には桜がないらしい。
主人公のモスキートが高校生時代、「大人になったら何がしたい?」と訊かれて、「日本に行きたいよ。桜の花を見てみたいんだ。見たことあるかい?」と答え、誰もが首を振るシーンがある。
そのシーンがエンディングの布石となっていて、桜を見たことがないことは重要なポイントなのだ。
モスキートは幼い頃からいじめられっ子で、友だちと呼べる相手もおらず、学校を転々としていた。新しく越してきた台北一の繁華街モンガの高校で、極道だが気の良い4人に目をかけられ、仲間に加わる。
「どうして俺を?」 「指が5本なきゃ拳がつくれないだろ。」
生まれて初めて友だちができたことを喜ぶモスキート。だが、高校は退学し黒社会に入って、本物の極道になってしまう。
モンガの黒社会では、地域での商売にこだわり飛び道具を嫌うトラディショナルな極道と、外部と取引し飛び道具も使うニューウェーブの極道とが凄絶なシマ争いを繰り広げていた。モスキートたちもその流れに巻き込まれ、翻弄されてゆく。
原題は「モンガ」だけなのに、邦題は「モンガに散る」と、思いっきりネタバレしている。こんな余計なことをした配給会社の阿呆に一度とことん説教してやりたい。
「極道なんて、最期は道端で死ぬのさ。」、劇中でモスキートがそう言った時にはじめて、あ、やっぱり彼も最期は死ぬんだな、そう感じさせるべきだったんだ。何もかもブチ壊しじゃないか。
韓国映画の名作「友へ チング」の世界を髣髴とさせ、胸が熱くなる。とりわけグループの頭脳役モンクを演じたイーサン・ルアンの好演が光っていた。彼は役づくりのために本物の極道に会っていろいろと教わったそうだ。
もともと俳優出身だというニウ・チェンザー監督は、黒社会のボスとしても出演していて、シブい演技を見せている。
「風が吹けば草はなびく。若い頃自分は風だと思っていたが、結局は草だったとわかったよ。若いうちならやり直しがきく。よく考えろ。」そうモスキートに語るところなんかは、惚れそうになるくらいカッコいい。
素晴らしい作品にもかかわらず、公開されている劇場は非常に少なくて、京阪神は京都のみ、中国地方は広島のみ、四国は松山のみという寒い状況。広島は都合が合わなかったので、今回は松山まで車をとばして観に行くことにした。
岡山-松山は180km、瀬戸大橋を渡り石鎚山を横目に見ながらのドライブは実に快適だった。しかも契約駐車場のチケットを見せると料金が1000円に割引されるという嬉しい計らいに涙が出そうになった。
松山の繁華街にあるシネマサンシャイン大街道は、入り口にオススメ度が掲示してあって実にユニーク。でも、この作品がデート向きとは思えないけどなあ。
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>のむら さん
いつもありがとうございます。
by Ken (2011-03-03 19:25)
付け足された「散る」とは、桜の事だったと今まで気付かなかった、邦題よりもみっともない私でした。
by BAR CINECITTA` (2011-04-12 04:17)