チェイサー [映画(た)行]
満足度 ★★★★
1年前に観逃していた作品。DVDで鑑賞してみて、やっぱり何が何でも劇場へ足を運ぶべきだったと、あらためて後悔の念を強くした。
全編途切れることなく続く緊張感は半端ではない。観終わった後でドッと疲労感に襲われ、ソファに体を横たえたまましばらく天井を見つめていた。気力も体力も充実した時でないと観るべきではないな、思わずそう呟いた。
例えて言うと、焼肉屋で最初から最後まで極上ホルモンだけを食べ続けたような感じだ。塩タンのさっぱり感もタレ漬けカルビの風味深さもない、この徹底したギトギト感、容赦ない血生臭さこそが、昨今の韓国映画の魅力であり魔力でもあると思う。
製作者が意図したものかどうかはわからないが、これまでに観たお気に入りの作品のテイストがふんだんに散りばめられているところもポイントが高い。
殺人の現場となった浴室 → SAW(ソウ)
道具として使われるトンカチ → オールド・ボーイ
犠牲者を引っ掛けておくフック → フロンティア もしくは
テキサス・チェーンソー
パーツを飾っておく水槽 → カル
幼い女の子との奇妙な愛情 → レオン
あくまでも独断と偏見に満ちた私見なので、あしからず。
チェイサー、つまり追いかける人である主人公のジュンホは、元刑事だが今はデリヘルの元締めをしている。髪はボサボサ、メタボ体型で、どう見ても格好良くはない。ソウルの山手、起伏の激しい所を走り回らされてヘロヘロになっている姿は気の毒なほど。
しかし、職業的背景といい、容姿といい、あえてスマートでない人物を主役に持ってきたことで、リアリティを増す効果を生んでいる。観客は彼と一緒に息を切らしながら走り回っているような気になってくる。
ジュンホが葉加瀬太郎に見えて仕方ない。
一方、追われる立場のシリアルキラー、ヨンミンは憎たらしいほどにスマートだ。追う立場のジュンホと対極的な描き方をすることで、ますます憎たらしさが増してくる。
ヨンミンが高橋克典に見えて仕方ない。
したたかな犯人と彼に愚弄され続ける無能な警察との間で孤軍奮闘するジュンホ。あと少しというところで追い詰められないもどかしさを上手くコントロールしながら、観ごたえのあるドラマに仕上げている。
ナ・ホンジン監督にとって、これが初の長編作品だという。次から次へと魅力的な作品を送り出してくる韓国映画界の底力を、まざまざと見せつけられた気がした。
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