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瞳の奥の秘密   @シネ・リーブル梅田 [映画(は)行]

EL SECRETO


















満足度 ★★★★★

これはすごい。本当にすごい。文句なしに★5つ。
大阪まで片道160kmドライブをした甲斐があった。

この作品には、映画でなくては表現できないものがすべて詰まっている。脚本、演技、撮影、音楽、そのいずれもが非の打ちどころのないほど緻密に組み立てられていて、2時間以上という長尺にもかかわらず、まったくそれを感じさせなかった。

アルゼンチン映画ということだが、いわゆるラテン・フレーバーはなく、少し前のヨーロッパ映画を観ているような気分だった。古臭いと感じる人も居るだろうが、そうじゃない、オーソドックスなのだ。エボナイト棒を削って万年筆を手造りする職人さんのように、古くからの技を守り伝えてゆく存在も必要だろう。

主人公はブエノスアイレスの刑事裁判所書記官であったベンハミン(前向キングこと市村正親似)。25年前に若い女性(竹内結子似)の暴行殺人事件を担当し、真犯人を突き止めて終身刑を求刑したにもかかわらず、正義は断行されず、溜飲を下げられないまま次の赴任先で定年退職を迎えてしまった。自らの人生にケジメをつけるため、彼は事件を基にした小説を書くことにする。

彼はしばらく振りにかつての職場を訪れる。元上司で今は検事になっている女性イレーネ(櫻井よしこ似、あるいは大地真央似)に会うためだった。きれいとは言えない字でなぐり書かれた手書きの原稿を見て、イレーネは昔ベンハミンが使っていたタイプライターを使うようすすめる。それは、事件の報告書を打ったもの。" A "のキーが打てなくなって戸棚にしまわれていた。

事件が起きた頃、彼らは惹かれあっていた。警察のでっちあげをくつがえして真犯人を探し出したものの、ベンハミンは見えない敵から命を狙われるようになり、身の安全を考えて地方への転勤を余儀なくされてしまう。彼はイレーネに本心を打ち明けられないまま、一人で旅立ったのだった。その後、地方の女性と結婚したが、長続きはしなかった。彼は25年間、事件と一緒にイレーネへの想いも引きずってきたのだ。

被害者の夫リカルド(北村一輝似)も同じ様に事件への想いを引きずっていた。彼は犯人に死刑ではなく終身刑を求めていた。なぜなら、犯人には死ぬまで空虚な人生を送らせてやりたいと思っていたからだ。しかしながら、終身刑は適用されず、忸怩たる思いで日々を過ごしていた。

物語のいたるところに伏線が張りめぐらせてあり、それをひとつずつ拾いながら、果たしてベンハミンとリカルドは、それぞれの人生にケジメをつけられるのか、固唾を呑んで観守る展開になる。極上のミステリーでありながら、熱いヒューマンドラマでもあり、せつないラブストーリーでもある。

原題は"El Secreto de Sus Ojos"で、英語に訳すと、"The Secret of Their Eyes"となる。邦題では伝わらないが、El Secreto(秘密)は単数なのに、Ojos(眼)の所有詞は "sus"、つまり複数形であるところがキモだったことに、観終わってからやっと気が付いた。

出演している役者さんたちのレベルは非常に高く、アルゼンチン映画界の層の厚さを物語っている。もっともっとアルゼンチン映画を観てみたい、そう思ったのは私だけではないだろう。

ベンハミンの部下として彼を支えるパブロを演じていたのは、「ルド&クルシ」でスカウトマンの役を演じていたギジェルモ・フランセジャだった。声を聴いてわかったのだが、画だけを見れば二人が同一人物だとはとても思えない。役者やの~!思わずそうつぶやいた。

PABLOBATUTA






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